法医学的考察1

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各屍体現象の検討−総論

本件被害者の死亡日時及び埋没日時を検討するよすがとして、主と
して「五十嵐鑑定書」を元に、若干の検討を加えたいと思う。
 
*本件屍体鑑定の資料性について
 
その前に、前提となる資料について検討する。
本件屍体鑑定には(主に)五十嵐鑑定と上田鑑定の2つがある。
五十嵐鑑定は周知の様に、昭和38年5月4日19〜21時頃被害
者宅裏庭で竹内武雄警視(狭山警察署長)立会、五十嵐勝爾執刀、
松田勝、落合好三、利根川春吉補助、鵜川勝二(鑑識課技師)添付
写真撮影、として行なわれたもの。上田鑑定は五十嵐鑑定での剖検
所見を基に、死亡推定日時、食後時間などにつき、再鑑定をしたも
のである。
 
本件に於ける重要な資料のひとつである解剖鑑定についてはまず、
剖検所見(胃の内容物や死斑の状態など)と、鑑定結果(死亡推定
時刻などの「診断」部分)とを分けて考え、前者は比較的信頼性が
高いものとして採用し、後者は、五十嵐鑑定での死亡時の食後推定
時刻などに見られる通り、ほとんど「誤診」と言ってよいものすら
あり、これは省いて考えるべきものと判断する。
その上で、上記「剖検所見」部から独自に死後推定時刻を算定し、
これを以下の記述に於いて、本件に適用して見たい。
 
なお、これらの内容については、その後専門家数人の意見を伺う機
会もあり(直接面談とメールでの質疑応答を実施)屍体状況につき
新事実が無い限りに於いては、現時点ではほぼ間違い無いものと断
言出来るものである。
なお仮に、剖検所見部をも含めて、屍体鑑定の全体に渡って資料性
に疑義があるとした場合は、上記上田鑑定(弁護団側の根拠とする
鑑定)も含めて、最初から屍体状況に関する資料は全く無いという
前提とせざるを得ず、この場合には剖検所見に見られる事実を、以
後の推理に適用する事も不可能となる事は言う迄も無い。
 (例えば五十嵐鑑定が信頼するに足りないとした場合には、胃中
  に「トマト」が含まれていた事も、信用性が無いと言う事にな
  り、推理は、その前提で行なわざるを得ない。ここでは上記の
  ように、五十嵐鑑定のうちの剖検所見を前提とする)
 
 
1、角膜混濁
 
顔部所見=『角膜は微溷濁を呈するも、径約0.7糎に開大せる歪
形瞳孔を容易に透見せしむ』
 
角膜は死後6時間から混濁が発現し、24〜48時間で完全白濁し
て瞳孔透過不能になるとされている。しかし環境によっても左右さ
れ、場合によっては死後1日半程度経過でも「微混濁」と判定され
る事もあり得ると言う。また角膜混濁の原因は、死後角膜に水分が
供給されなくなる事と、蛋白質の腐敗変性である。
 
本件屍体の場合、目隠し、土中埋没、うつ伏せ、などの状況が角膜
の乾燥及び腐敗具合に影響を与えた事も推測される。
 
よって、上記鑑定結果からは被害者は死後6〜36時間ほど経過で
あると言う結論が得られる(但し後述も参照の事)。
 
2、死斑
 
概括的全身所見=『全身の皮色は一般に死後の蒼白を示すも、躯幹
及び上下肢等には淡赤色虎斑状死斑が弱く発現しあり』
胸腹部所見=『皮色は左右外側面並びに胸骨部は虎斑状に淡赤色を
呈する』
背部所見=『左右両側の外側部に於ては皮色は虎斑状に淡赤色を呈
す』
 
被害者の身体前面及び背面に死斑が出現している事が記載されてい
る。死斑は、屍体が仰向けならば背面に、うつ伏せならば前面に、
即ち屍体の下になった面に、時間的には死後2〜3時間で顕われる
とされる。また、死後4〜5時間程度の時、屍体の体位を変化させ
ると、また新しい死斑が体位の変化によって下部になった場所に発
現するが、その前に一旦発生した死斑は消失する(死斑移動)。
他方、死後7〜10時間程度を経過した場合、体位の変化によって
も前に発現した死斑は消失する事無く、新たに下部になった部位に
新たな死斑が顕われる。且つ、死後12時間程を経過すると、死斑
の発生は停止する。
 
従って、屍体の前面と背面両方に死斑が顕われているという事は、
まず最低7時間程度の間、屍体の体位は仰向けになっており、その
後うつ伏せにされた後、更に最低7時間程度の時間を経過したもの
と見られる。尚且つこれらの体位変化は死後12時間以内に行なわ
れたものである。それ以降の体位変化では新たな死斑が発生しない
からである。
 
よって、上記鑑定結果からは、死後最低14時間経過との結論。
 
3、死後硬直
 
概括的全身所見=『死体硬直は足関節に於てやや強く存在するも、
その他の諸関節に於てはいずれも緩解しあり』
 
死後硬直は、足首以外の部位ではほとんど緩解された状態との記載
である。
 
死後硬直は死後2〜3時間で発現、10〜15時間で最硬に達し、
その後24〜48時間で緩解を開始し、70〜90時間で戻る。
発現(消失)の順は、顎→上肢→下肢。
 *足関節とは医学的には足首の事。硬直を見る関節は、顎関節、肩関節、
  肘関節、手関節(手首)、股関節、膝関節、足関節を順番に見る。

 
「足関節以外はほぼ緩解」と言う状況に至る為には通常は3日から
3日半位、仮通常よりも早く硬直が発現、緩解したとしても、早く
とも死後2日以上は経過しているものとしなければならない。
 
よって「足関節=下肢にやや硬直があり、その他の部分では緩解」
と言う事は、本件屍体は死後最低2日〜4日程度経過との結論。
 *上記2日〜4日は最大限の幅を持たせた。最大限の幅を持たせてもなお
  1で検討した角膜混濁の状況と矛盾して来る。この件については後述
  検討する。

 
4、腹部変色

 
胸腹部所見=『腹部はほぼ平坦にして、腹壁は堅固ならず。妊娠線
を認めしめず。皮色は左右外側面並びに胸骨部は虎斑状に淡赤色を
呈するも、その他の部位に於ては一般に死後の蒼白を示す』
 
腹部の変色(腐敗性変色)は死後24〜48時間後に側腹部から淡
青色になり漸次全身に及ぶとされる。しかし変色がはっきりと現わ
れるのは死後3日程の場合もある。
 
本件屍体の場合「腹部の左右外側面=つまり側腹部に淡赤色の斑点
状変色」であって、淡「青色」では無い。変色が青色ではなく、赤
い斑点状であると言う事は、この記述は死斑であると推察される。
 
よって変色状況からは、死後約1日〜3日程度と結論される。
 
5、腐敗
 
上記1〜4の状況を総合すると、本件屍体に於いては、死後硬直の
緩解がある程度進行した状態である事や、腐敗性変色が見られない
事により、ほとんど腐敗していない状態であると言え、いまだ腐敗
には至らぬ過程か、或いは腐敗が始まる直前の状態であると判断さ
れる。
 
6、消化器中の内容物
 
胃=『腔内には大約250竓の軟粥様半流動性内容を容る。消化せ
る澱粉質の内に、馬鈴薯、茄子、玉葱、人参、トマト、小豆、菜、
米飯粒等の半消化物を識別せしむ』
腸=『十二指腸内並びに空腸内には微褐ー淡黄色半流動性内容ごく
小許を容る。廻腸には黄緑色軟粥様内容と共に小豆のかわ小許を容
る』(小腸の構造=十二指腸→空腸→廻腸)
 
判明している被害者の食事内容は、1日朝に赤飯、昼(午前11時
50分頃から12時5分頃)にカレーライスを喰った。
 
消化機序は一般に、米飯・野菜・果物は食後2〜3時間、肉類は4
〜5時間で胃から腸に移り、6時間経過すれば胃から空腸上部まで
殆ど空虚になるとされる。
また、消化器内の食物は、死後に於いても、生前に分泌された胃液
等により消化がある程度は進行する。
 
そうであれば昼12時5分頃迄に摂取したカレーライスは、遅くと
もその3時間後=15時5分頃迄には胃内から姿を消す筈である。
他の事件周辺状況から推察するに、被害者がこの15時5分頃迄に
殺害されたとは思えない事、カレーライスの材料には含まれていな
かったと推察される茄子、トマト、小豆等がある事、更にカレーラ
イスの材料に含まれていた肉が(野菜類より消化に時間がかかるに
も関わらず)胃内に既に無かった事、この3点から、解剖時に認め
られた胃内容物はカレーライスの残飯では無い事は確実である。
従って胃に残留していた内容物は、昼食の後それとは別に、「馬鈴
薯、茄子、玉葱、人参、トマト、小豆、菜、米飯粒」を含む物を摂
取したものと見られる。
 
他方廻腸内の「小豆の皮」については、朝食に摂取したとされる赤
飯に含有の小豆が、6時間以上を経過して、胃→十二指腸→空腸を
通過して、廻腸に達していたものと見られる。
 
以上の胃内容状況から総合すると、死亡時は昼食以外に摂取した最
後の食事直後〜最長でも2時間後程度と見られる。死後に於いても
酵素による消化が進行する事と、解剖時に於いても食物の種類がそ
れと解る程度に未消化状態であった事から、食事直後の死亡もあり
得るのである。
 
7、死亡推定日時
 
上記1〜5の状況を総合すると、
 
 角膜混濁=死後6〜36時間
 死斑状況=死後最低14時間
 死後硬直=死後48〜96時間
 食後2時間以内の死亡

 
 *上記の時間記述は、アバウトなものとして読んで頂きたい。死後半日を
  経過すると、死後何時間という厳密な判断は不可能である。従って例え
  ば1〜2時間や半日程度の時間のずれは、あり得ることである。

 
なお、上記推定日時の時間記述は、全て「空気中」に於ける腐敗現
像を基準としたものである(上記の文面は「五十嵐鑑定書」の記載
と、一般法医学書数冊の記述を元に投稿させて頂いた)。
 
さて本件に於いて実際の死亡推定日時を算出するには、本件屍体が
「空気中」では無く、ある一定の時間「土中」に存在していた事を
考慮に入れなければならない。
そこで小生が現在取っている「1日17時頃殺害、2日4時頃土中
埋没」説を、上記投稿により検討して見たい。なお、埋没時刻を、
「4時」としたのは、穴の掘削を2日午前2時頃から開始し、この
作業時間を2時間とし、当日空が薄明となる4時半前迄には作業を
終了するものと考え、4時に埋没完了と想定したものである。
 
1日17時殺害〜2日4時埋没迄=11時間(空気中)
2日4時〜4日10時屍体発掘迄=54時間(土中)
4日10時〜19時屍体解剖迄=9時間(空気中)

 
単純計算では死後74時間(約3日)経過となる。
しかし土中では腐敗の進行速度は、空気中の8分の1となる。
(腐敗の進行速度=土中:水中:空気中=1:2:8の割合で土中
 での速度が遅くなる=Casper's law)
これを考慮に入れて算出すれば、土中54時間=約7時間弱相当
 
 *但し、死斑、死後硬直、角膜混濁などはCasper's lawは該当しない。
  腐敗は細菌の繁殖によって体を構成するたんぱく質が分解・変性する事
  である為、土中などでは、空気に触れない事や温度が低い事などにより
  細菌の繁殖が抑制さる事によって、腐敗の進行が遅くなる。死斑などの
  現象は、細菌の繁殖の結果では無い為、こうした事が起こらない。
  この件は後述で検討する。
 *但し、死後硬直の緩解(蛋白質の腐敗変性による)は当然、その法則が
  適用される。蛋白質の変性による角膜混濁も同様。

 
仮に死亡推定日時を解剖74時間前即ち屍体の死後経過時間を74
時間としても、そのうち54時間は土中にあったから、この土中滞
在時間に於ける腐敗進行を空気中での進行具合に換算すれば、
 
殺害〜埋没迄=11時間
埋没〜発掘迄=7時間(空気中換算)
発掘〜解剖迄=9時間

 
よって合計27時間となる。
(実際は74時間経過でも、屍体が土中にあった事により、腐敗が
 27時間分しか進まないと言う意味)
 
死後硬直状況からは死後48時間以上との結果と矛盾して来るが、
ここで注意しなければならない事がある。
それは、本件屍体が発見された後、解剖する迄9時間もの間空気中
に置かれていたという事実である。この事実を考慮に入れると、実
質腐敗進行が27時間分であっても、決して矛盾するものではない
という事になるのである。後述参照
 
従って、「1日17時頃殺害、2日4時頃土中埋没」という事も、
法医学上は、否定されないと言う結論となる。
 
試みに当説とは逆に、仮に、(いつを想定しても良いのだが)
『3日1時殺害、4日2時埋没』
として見よう。これは、佐野屋の後に殺害しその日の深夜に埋没と
した場合である。
 *3日の未明の埋没では死斑状況が矛盾する。
殺害〜埋没=25時間
埋没〜発掘=8時間(土中時間はこの1/8で1時間)
発掘〜解剖=9時間

 
で、実際は死後42時間だが土中での腐敗進行速度を考慮すると、
35時間(その分の腐敗しか進行しない)となるから、この時間想
定ならばまずは妥当な線であると言える
          ↓
       *此の部分訂正
死後硬直状況が死後最低48時間以上という結果からは、佐野屋後
の殺害は困難である。但し、後述の件(発掘後速やかな腐敗進行)
を考慮すれば、有り得ないと迄は言えない。しかし、可也その可能
性は低くなるとは言える。
 *また、殺害から埋没迄25時間の経過があるが、この説をとると屍体は
  まだ埋没前に、仰向けからうつ伏せへの体位変化があったものと見なけ
  ればならない。死後12時間以上経過すると、新たな死斑が現れないか
  らである。
 
 
結論として、
 
*法医学的見地からは殺害が何日であったかについては、5月1
 日〜3日と言う、大幅な可能性が考えられるが、1日〜2日と
 言う可能性が最も高い。

 
と言う事である。
 
以上は純粋に法医学的見地のみから、殺害と埋没の日時について述
べたものである。
この上更に精密に殺害&埋没日時を特定するには、上記1日〜3日
に当てはまる期間で、法医学的見地以外の事件周辺状況から考慮す
る以外に道は無いものと思う。
 *しかし上記は最大限に可能性を拡大解釈しての事。結論はこちらへ
 
(少し複雑な内容となりましたが、お解りいただけたでしょうか。
 土中→空気中 の換算は、意味を取り違えると全く逆の結論に
 なってしまいます。その点、注意して書きました。)
 
なお、冒頭の資料性の検討で述べたように、「五十嵐鑑定」全体を
剖検所見部も含めて信用出来ないものとした場合には、これら屍体
状況は勿論全て考慮の外に置かざるを得ない。
解剖時の鑑定が、過誤又は、なんらかの作為によって虚偽、或いは
改竄された可能性も、全く無しとしない。
いづれにせよその場合には、元々参照するべき資料が皆無と言う事
と同じとなる為、屍体状況からの殺害時刻、埋没時刻等の推定は、
断念し、他の本件犯行周辺状況からそれらを推測する事になる。

疑問点=角膜混濁

Casperの法則は、腐敗の進行速度に適用されるものである。
そうなると、上記迄に検討したように角膜混濁の時間経過が死後最
大36時間と見た場合、屍体の土中埋没があっても、これを文字通
り適用して、死亡推定時刻は解剖時刻から数えて36時間前、つま
り3日午前7時以降と言う事になる。
そうなると、今迄総合的に検討した「死後1〜3日の間」と言う結
果は、どのような事になるのであろうか。
 
*角膜混濁は死後経過時間の判定には参考程度のものである
 
その点について、筆者が法医学専門家に伺った処、『角膜混濁の程
度は、死後24時間を経過していてもまだ微混濁しか無い場合もあ
れば、ほとんど見られないと言う場合もあり、要するに屍体の置か
れていた環境に左右されやすい』
その為、角膜混濁の程度は死後経
過時間の判定には参考程度にしかならない、と言う結論である。
 
例えば殺害直後、或いは殺害から数時間後などに、屍体をうつ伏せ
にし、目隠しをした上で土中に埋没したと想定すると、これらの条
件から、角膜の乾燥が通常よりも進行しない結果、24時間経過で
も確認出来ない事もあれば、更に長時間を経過したにも関わらず微
混濁と診断される場合もあると言う事である。
 
特に本件の場合、屍体の土中埋没期間が、仮に相当長時間に渡って
あったとするなら(これはCasper's lawには無関係に)角膜の水
分欠乏が、他の条件とも相まって相当程度に防止された可能性も考
虜されて良い 。
 *角膜の水分欠乏を妨げたと思われる条件
    ・土中埋没
    ・目隠し
    ・うつ伏せ
    ・顔の下にビニルを敷いてあった

また、角膜混濁は、水分欠乏だけでは無く、角膜内層の蛋白質の変
性によっても発生すると言われるが、蛋白質の変性の方はまさに、
屍体が土中にある事によって妨げられる可能性が高い。
 
以上の点から、角膜混濁の程度だけを以て本件屍体が「死後最大で
も36時間経過、殺害は3日7時以降」とは言い切れないと言うの
が本章の結論となる。
 
*死後硬直の緩解状況との矛盾
 
死後硬直は24〜48時間経過で緩解を開始し、70〜90時間で
完全緩解となる事は既述。本件屍体は足首にやや強い硬直、他の部
位ではいづれもほぼ緩解の状態であった。
 
仮に角膜混濁の状況だけを適用して、死後36時間との判定を下し
たとすると、どのように早くとも36時間経過の時点でのほぼ緩解
をした状態、というものは時間的に矛盾して来るのである。
 
このように、屍体現象の個々の状況だけに目を向ける場合、そのお
のおのが矛盾撞着を来す事が在り得るのであり、それ故個別の現象
に一般論だけを当て嵌めて結果を算出し、これを全体に適用して早
急な結論を下す事は、心して避けなければならない。

発掘後の時間経過について

本件屍体は発見から9時間もの間、空気に晒されていたと言う事実
である。当日(5月4日)の天候は快晴、気温もそれなりの上昇を
見たと思われる。
通常に考えれば、殺害・埋没の後、発掘後の9時間を加えれば、死
後の経過時間の計算はそれで良いように思える。しかし、ここで、
以下の事を考慮しなければならない。
 
それは、屍体が土中にある間に、腐敗を進行する細菌が屍体全体に
侵入していると言う事である。これは水中などでも同様である。
 
本件屍体は、農道に埋没してあった。農道という場所柄、その地中
には、作物を成長させたり、有機物を分解させる細菌の存在がある
ものである。
他方、5月1日には午後4時半頃〜翌2日の2時半頃迄、2日には
午後4時半頃〜7時半頃迄の間降雨があり、埋没時の土には水分が
充分に含まれていて、地中の細菌が屍体に侵入しやすい状況にあっ
た事は容易に推測出来る。
尚且つ、屍体の土中滞留時間を長めに想定するほど、こうした細菌
が土中にある間に屍体に浸透し、発掘後空気中に出された後、腐敗
の進行がより速くなった可能性が高くなる。
 *この意味からすると、佐野屋後の殺害、埋没であると、元々死後経過時
  間が短く、且つ土中滞留時間も短い、従って屍体発掘後にそれほど腐敗
  進行が速まらなかったと考えられる。

 
このような屍体を、土中から空気中に出した場合、その後の腐敗の
進行が、通常よりも速くなる事があると報告されている。腐敗を進
行しやすい地上に屍体をあげると、直ちに腐敗が始まり、しかも速
やかに進行し、元々空気中にあった屍体よりも腐敗が進んでいると
言う例も少なく無いと言う事である。
 
そうであれば、本件屍体のように、発掘後9時間もの間空気中にあ
り、しかも1日未明以前からの長時間に及ぶ土中滞留があったとす
るなら尚更、土中で進行が遅れていた腐敗が極めて速やかに進行し
よって、例えば死後硬直の緩解が、解剖時には足首以外はほぼ緩解
に至っていた=死後最低2日以上経過の状態 であった事が、充分
あり得るのである。
 
ところで、更に屍体現象(腐敗)が進行すると下記のようになる。
(死後3日以上)

*変色
 硫化水素により菌の多い側腹部から淡青色になる(24〜48時
間で出現)

*腐敗網
 溶血した血色素が血管外に染み出て樹枝状に変色(暗青色、暗赤
褐色)上胸部、下腹部、大腿部に好発。

*腐敗ガス、腐敗水疱
 腸内ガス増加=腹部膨隆
 鼻口=腐敗泡沫液
 肛門=脱糞
 皮下組織にガスの貯留=全身にたまると巨人様化
 表皮と真皮の間に腐敗水疱 =暗赤色液状腐敗産物貯留
 臓器は腐敗ガス疱、腐敗水疱でスポンジ状 (泡沫臓器)
 臓器は軟化、泥状化、液体化して融解

*白骨化
 腐敗→硬組織のみ残存(地上:1〜数カ月、地中:2〜3年)
 5〜6年で崩壊。
 

 尚、法医学関係の専門家の方で当頁の記述に就き、ご意見がある方はトッ
 プ頁より、メールにて是非ご一報下さる様、お願い申し上げます。

1|決着
◆長兄説◆
◆黒幕説◆
◆屍体埋没◆
◆怨恨説◆
黒幕説補稿
異説 紛々
◇狂言誘拐説◇
長兄の手記
電話の証言
法医考察1
法医考察2
法医考察3
法医問題の決着
基礎事実の検討1
基礎事実の検討2
現地調査写真
現地調査写真2
2004年実況見分
実況見分考察
2005年現地見分
2006年現地見分
2007年現地見分
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