*推理に於ける仮定(仮説)の問題
「被害者一家に家庭的機密事項があった」「被害者の出生に秘密
があった」等は、単なる仮定の話であって、実は全く何の根拠も無
い。根拠が無い話ははっきり言えば「つくり話」と言っても良いの
である。ここでの根拠と言う意味は厳密なもので、むしろ「証拠」
とでも言うほうが適切かも知れない。
このあたりに「推理」と言う行為の困難さがある。100%確実
な事実だけを材料とするならば、言い換えれば全ての仮定と言うも
のを排除するならば、推理と言う行為自体が成り立たない。「もし
何々であったなら」「こう考えると辻褄が合う」と言うものが仮定
と言う事であるが、事件の真相を推理したある説が有名になると、
仮定を「事実」と取り違える者、仮定の根拠を掲示板その他で尋ね
る者が現れる。説や仮定の話が独り歩きして来ると、こうなる。
これと似たような話では「被害者は生前から性交渉の経験があっ
た」「被害者は殺害される前にトマトとおにぎりを食べた」と言う
ものがある。その「根拠」は遺体解剖時の法医学鑑定にあるらしい
が、自分できちんと法医学を学習してみるなり、専門家に聞いてみ
るなりと言う行為をせずにいると、こうなる(それらの事について
は当サイトの法医学関係頁に詳細を記してある)。
法医学的事実の方はまさしく「証拠」と言って良く、こちらは推
理の対象ですらなく、客観的事実であって、これらの事実から更に
どのような事実が推定されるかは、仮定や仮説が入る余地の全く無
い科学的考察の世界となる。故に、当サイトでも法医学問題は推理
編ではなく、「一般的考察」の部類に入れてある。
このように、仮定や仮説の類いが独り歩きをすると、特にネット
上などではこれらを、既に一般的に認められた事実と取り違え、更
にそれを前提としての珍推理に陥る者が、過去の経験でも見受けら
れたが、元々、推理に於ける仮定と言うものは上記のように、悪く
言えば「つくり話」のようなものなので、注意が必要だ。
少なくとも、ひとつの仮定の上に更に仮定を積み上げて行くようになると、真相に迫ろうとして推理しているのにも関わらず、次第に話が荒唐無稽に陥って行くものだ。
以上、賢明な読者には今さら言う迄も無い項目であるが、広い世
の中にはそうでも無い者も大勢居るらしいので、当説に限らず、念
の為、但し書きをしておく事にする。 |